朱肉についてのアレコレ知識(1) もともとは血だった?
美しい印影を紙に写すためには、印鑑の良さもさることながら、朱肉の良し悪しにも左右されるということをご存知でしたか?
朱肉と言えば、「どんな朱肉が良いかお勧めの選び方」でご紹介したように、乾きが早くて便利な「スポンジ朱肉」と、本格的な「練り朱肉」の2種類があり、用途ごとのお勧めの使い方についてもご紹介しました。
このページではさらに朱肉のアレコレということで、朱肉にまつわる話をしていきたいと思います。
落款などに向いている「印泥」
普段の押印に使っている人はほとんどいませんが、中国から伝わる伝統の「印泥」も朱肉の一種です。
印泥は印影が鮮明に写り、深みがあり、にじみや変色が少ないのが特徴です。落款印などが実に映える朱肉です。
扱いはやや難しく、放置すると朱と脂分が分離してしまいますし、暑い季節にはべとつきます。印泥はマメに練ったりする手間もかかりますので上級者向けといえます。
朱い理由は縁起が良いから?
そもそも朱肉はなぜ赤いのでしょう?
かつて「血判状」のように大事な証書に自らの血液で指紋を押すという行為が行われていましたので、朱肉の赤い色は擬似的な血液であるとも言われています。
江戸時代には武士階級は朱肉を使っていましたが、庶民は黒だったようです。
朱肉の赤は、縁起が良い、または魔除けから来ており神社の鳥居が赤いのも同じ理由からだそうです。
ちなみに、朱肉はなぜ「肉」と呼ばれているかというと、朱肉の朱色と弾力性のある感じが「肉」を想像させるから、という説が有力です。
どんな材料を使って朱くしているか
朱肉の赤い色の成分は何でしょうか。
朱の色は硫化水銀(天然のものは辰砂(しんしゃ))によるものです。
朱肉は硫化水銀を昇華させたものに希釈したアルカリ溶液を加えて、植物や和紙の繊維を混ぜ、ひまし油や木蝋、松脂を入れて練り固めたものです。
現在では硫化水銀は燃やしたときに水銀が発生し有害とのことで、鉄、モリブデン、アンチモンなどの化合物に取って代わりつつあります。
練り朱肉は、時間とともに固くなって使えなくなってしまうということがあります。カチカチになると全く使い物にならなくなることがあります。
そんなときにはカチカチになってしまう前に、固まった朱肉をヘラで起こし、内部の柔らかい部分を出してマメに練り直すことによって長持ちさせることができます。ヘラを熱すると練りやすくなりますよ。