印鑑文化はなぜなくならないのか?(1) 法律上必要だから
日本特有の印鑑文化
ゆりかごから墓場まで・・日本には印鑑文化が根付いています。
世界中を見てもこのような印鑑文化がある国は日本を除いて他には殆どありません。
住所変更、婚姻届、印鑑登録、遺言書などなど、印鑑が必要な公的書類には上げてもキリがないほどです。
役所で、ある書類への押印を求められて、「あ、印鑑忘れた!」というのは皆さん一度ならずとも経験されたことがあると思います。
そのたびに家に取りに帰ったり、認印を文房具屋で買ったり・・何かと面倒も感じます。
生涯にわたって必要な印鑑
日本人は一生で平均5本の印鑑を持つと言われています。
近年では電子取引、電子申請、電子署名などが普及してきています。
印鑑の高級素材として使われる象牙はワシントン条約で輸入禁止になっており、1989年から基本的に輸入ができていません。
国内流通の象牙の売買は合法ですが、生きたままの象を殺して象牙を獲って密輸入している、など象牙に対するネガティブキャンペーンも広まり、日本の印鑑文化にも影を落としています。
また銀行も印鑑無しで口座開設が可能になるなど「脱印鑑」の流れは加速しつつあります。
印鑑はこれからも必須ツール
印鑑の出番が少なくなると思いきや、今のところ印鑑の必要性はなくなることがない気配です。
海外で暮らしていると、当然ながら印鑑での押印を求められることはありませんし、究極的に言うと印鑑の全くない暮らしだって実現可能だと思います。
でも印鑑はなくなることがない・・それはなぜなのでしょうか。
ひとつは民法や様々な法律が「押印の必要性」を規定している箇所がたくさんあり、これらを変更するにはたくさんの法改正が必要になるからです。
例えば遺言書は自筆の書名と押印が必要であることが民法968条で規定されています。
刑事訴訟法には召喚状や拘留状には裁判官の「記名押印」を規定しています。押印がなければ法的な文書として効力を持たないわけです。
他にも「記名押印」すること規定している法律上の効力を持つ文書がたくさんあるのです。
実は1997年に「押印見直しガイドライン」を掲げ、文書のペーパーレス化、押印の簡略化が提唱されたことがありましたが、大きな流れにはなりませんでした。
やはり多くの法改正という点がネックになっているものと思われます。
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