印鑑の歴史(1)

印鑑の歴史(1)

人類の歴史の中で印鑑はいつ登場したのでしょうか。

 

メソポタミアやエジプトで

 

紀元前5000年頃にはメソポタミアで印章が使われており、中東の遺跡から印章が発掘されています。

 

メソポタミアでは、印章は円筒印章といい、粘土板、または封泥という粘土の塊の上で転がす円筒状の印章が用いられていました。

 

古代エジプトでは紀元前3000年くらいのものと思われるヒエログリフが刻印された印章が発見されています。

 

中華文明

 

中国で紀元前1000年以前の殷の時代から印章が使われていたようですが、学術的に発掘されたものとしては戦国時代(紀元前400年〜220年)のものが最古です。

 

その後の秦・漢の時代になると、印章は時の権力者の象徴として用いられるようになりました。また封泥に代わって、朱泥を使うようになりました。

 

隋、唐の時代には書道作品の署名として用いられるようになりました。

 

また印章そのものを芸術作品とする「篆刻」という文化が生まれ、発展していきました。

 

このように中国では、印章は一般市民の責任を証明するもの、つまり現在の日本で使われている方法では広まらなかったことが分かります。

 

昔はヨーロッパでも使っていた

 

古代メソポタミアで生まれた印章は、どのようにヨーロッパに伝わっていったのでしょうか。

 

紀元前2000年のエーゲ文明では様々な形の印章が使われていたことが知られています。

 

さらに古代ギリシャでは、古代エジプトの影響も受け、門扉、手紙の封印、指輪型の印章などが用いられるようになり、ローマ帝国にも継承されました。印章を用いて財産、食料、手紙などに封をする習慣も盛んになりました。

 

古代ローマを描いた映画などでもシーザーなど立場の高い人たちが指輪型の印章を用いて押印しているシーンを見たことがあるかもしれません。

 

その後中世ヨーロッパでは印章を用いることが盛んでした。14世紀から15世紀には印章の使用は最盛期を迎え、王侯貴族や聖職者だけではなく、ギルドと呼ばれる職業組合や一般市民にも印章が普及していました。

 

印章の普及の理由としては、識字率の低さがあったと言われます。

 

印章からサインの時代へ

 

その後15世紀になって識字率の向上、人文主義の高まりもあって、印章はサインに取って代わられるようになりました。

 

手紙に封をする時には封蝋(シーリングワックス)に家の紋章をかたどった印章で押印することが盛んでしたが第一次世界大戦後の貴族の没落によりその習慣も廃れていきました。

 

現在では、高級感を出すものとして封蝋に印章を押すことも行われています。

 

印章はエンブレムとして州章、郡章などにも用いられていますし、アメリカ合衆国の大統領は自らの職業章を持っています。

 

欧米でのノータリー・パブリック(公証人)は、エンブレムのエンボス印(紙に浮き彫りになる印)を押します。

 

 

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