印鑑の歴史(2)
日本で現在のような印鑑文化が根づいたのにはどんないきさつがあったのでしょうか。
日本で現存している最古の印鑑は漢委奴国王印(かんのわのなのこくおういん)です。
筆者は福岡出身ですが、これは「金印」としてとても有名で、この金印が出土したとされる志賀島というところには「金印公園」というものがあります。
これはまだ大和朝廷よりも前の時代で、漢帝国から日本の奴の国に贈られた贈り物であり、実用的な印鑑としての歴史的証拠ではありません。
実用化されたのは大和朝廷時代
印鑑が実用的に使用されるようになったのは大化の改新のあとの701年大宝律令以降です。
隋や唐に倣った官印としての使用でした。
平安時代から鎌倉時代にかけては「花押」という署名の代わりに用いられる符号が盛んに使用されるようになりました。
その後、室町時代には宋からの書画に押されている印章から、印鑑を用いる習慣が再興し、花押よりも簡単であることから武家社会で用いられるようになりました。
織田信長の「天下布武」の印章は有名です。
江戸時代には私文書にも普及
江戸時代になると公文書の他に私文書にも印鑑を押す習慣が広まりました。
一般市民も印鑑を持つようになり現代と同様に印鑑の押された文章が重要視されました。印鑑の普及にはヨーロッパの一時期と同じく、識字率の低さも関係しています。
印鑑制度が確立
明治時代になり、明治政府は印鑑の使用を悪習として廃止しようとしますが、欧米諸国と同じようにサインを識字率の低さ、事務処理変更の煩雑さから印鑑制度は存続し、1900年頃には現在と同じような実印と印鑑登録を含む印鑑制度が確立しました。
印鑑登録は各市区町村で管理するものとなっています。
人類史とともに歩んできた
このように印鑑は古代メソポタミアに始まり、中国、ヨーロッパへ伝播していきました。日本の印鑑文化は中国から伝わったものです。
しかし現代において毎日の生活に印鑑が欠かせない国は日本と韓国、台湾のみです。韓国、台湾についてはかつて日本の統治下にあったため日本の印鑑制度がこれらの国に伝わることになりました。
日本の印鑑文化は現代のネット社会でますます進化しています。
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